湿度編 - 木がつくる住環境

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住環境と湿度

人間の快適さに影響する気候要素は温度、風速、湿度です。 温度や風速をいくら調節しても、湿度が高いと快適とは感じられません。 快適な住環境を得るためには、住宅に基本的な湿度調節機能が備わっていることが必要です。

木の湿度調節機能

木材は調湿性能をもった優れた材料ですが、住宅の内装に用いた場合に、 その効果はどのように現れるのでしょうか。平屋建6畳の小型住宅の内装に、合板とビニールを用いて、 それぞれの湿度変化を観測した結果が図1です。ビニール内装の住宅は、1日周期で著しい湿度変動を 示していますが、合板内装の住宅は、湿度が50%前後に一定しています。合板が湿気を吸湿・放湿し、 室内の湿度調節を行なっていることが明らかです。

図1:住宅内の湿度変化 出典:木材研究資料 則元 京、山田 正 No.11(1977)

表1は内装材の湿度調節性能の評価表です。Bは湿度変動に伴って起こる湿度変動を 調節する性能で、Xは多量の湿気が流出入した場合に起こる湿度変動を調節する性能で分けています。 表の左上方にあるものが、最も性能の良い材料です。インシュレーションボード、シージングボードの評価が 特に高く、合板、パーティクルボード、ハードボードなども性能の良い材です。ガラス、ビニールタイル、 アクリル樹脂などが最も劣っています。しかし、基材に調湿性能に優れた木質系材料を用いても、 表面が吸・放湿性の悪い材料で処理されていると調湿機能は低下します。

表1内装材料の調湿性能評価

湿度に対する木材の性質

木材は湿度が高くなると湿気を吸収し、湿度が低くなると放湿してそれを高め、 周りの湿度が一定になるように自動的に調節しています。このような木材の調湿機能は、 正倉院の宝物が非常に良好な状態で、長年保存されてきたことからも、一般的によく知られています。 正倉院の宝物は、「からびつ」という厚さ2cmのスギ材の箱に収納されています。 スギ材で「からびつ」と同様の箱を作り内外の湿度を観測したところ、図2のように、 箱外の湿度が50〜80%まで変化しても、箱内は65%前後に保たれていました。 「からびつ」内の湿度も、ほとんど変動せず一定に保たれていたのでしょう。

図2:スギ材の箱の湿度変化 出典:「木材工業」 東 修三 No.29(1974)

細胞構造と収縮・膨張

木材は長さ約3mm、太さ約30ミクロンの小さな細胞の集合体です。 細胞は図3のように、複雑ないくつもの層で構成されています。その大部分が2次壁中層と呼ばれる層で、 全体の約8割を占めています。この層の骨格を作っているのが細い棒状のセルロースの結晶、 ミクロフィブリルです。このミクロフィブリルの間をマトリックス(リグニン、ヘミセルロース)が 充填しています。木材がビニール、ガラス、コンクリートなどよりはるかに多くの水を保有できるのは、 木材の構成成分の70%が親水性で、1g当たり最大約0.3gの水を保有できるからです。 水はミクロフィブリルの表面やマトリックスに保有され、このときにミクロフィブリルの間隔が広げられます。 逆に放出するとその間隔が縮みます。このような細胞の膨張・収縮が、木材の寸法変化となります。 しかし、ミクロフィブリル内の結晶には、水分子が入りこめないためミクロフィブリルは膨張・収縮しません。 それで、ミクロフィブリルの方向、すなわち繊維方向には寸法変化が生じにくいのです。

図3:木材細胞の構造 図4:木材の収縮率

健康・衛生と湿度

湿度は人間の生理、病気とも深い関わりがあります。 細菌類、カビ類、ダニ類の微生物は、適当な湿度、温度のときに、室内のほこりを 栄養源にして繁殖します。したがって、室内の衛生は、ほこりの除去とともに、微生物にとって好適な湿度、 温度環境を作らないことが重要になります。細菌類はほこりとともにカーペットなどの内部に潜りこみ、 人や物が動くと空中に舞い上がり浮遊菌となります。住宅26軒の分析結果では、 ほこり1g当たり一般細菌数6万4000、環境衛生の指標である大腸菌4800、 黄色ブドウ状菌2700、セレウス菌2800、緑膿菌120が発見されています。 これらの浮遊菌は、図5のように高湿度、低湿度では長い時間生存し続けますが、 湿度が50%の状態では大半が死滅します。カビ類も人体に悪影響を及ぼします。 カビの胞子は肺の奥まで入り込み、ぜん息や肺疾患症などの原因になります。 増殖条件はダニ類と同じで、一般に温度、湿度が高く、ほこりの多いところで増殖します。 ほこりを除去し、湿度が80%以上にならないような配慮が有効な防止策です。 ダニ類による皮膚炎、アレルギー性疾患など健康上の問題は、気密性の高いコンクリート住宅の 急増に伴い表面化してきました。カーペット、ソファー、畳のほこりとともにダニ類は生息していますが、 湿度が70%以下になると激減します。図6はコンクリート住宅のじゅうたん、畳をナラ材の床に改築し、 改築前と改築後のダニが減少していることが、はっきり認められます。 木の床は湿度が一定で、掃除機での吸引がしやすく、ダニが潜りこみにくいため生息場所がなくなり、 また木材には精油の一種のダニ繁殖抑制成分が含まれていることなどが、ダニ類減少の理由と考えられます。

図5 空中浮遊菌の生き残る割合と湿度 出典:「建築気候」共立出版(1976)

図6 改築前後におけるダニ生息率 出典:昭和62年度農林水産試験報告(1987)

表面結露を防ぐ木材

冬季、夜間になって住居の窓や壁の外側が冷えるのに伴い内側の温度も低下し、 それに接する空気層の温度も下がります。その結果、窓や壁の内側に接する薄い空気層の温度が露点になり、 窓ガラスや壁面に水滴が生じます。これが表面結露です。表面結露は、炊事場や風呂から多量の水蒸気が 流入した場合や、夏季の冷房時にも生じます。結露は材料の熱伝導率や熱容量が関係します。 木材が表面結露を起こしにくいのは、アルミニュウムやガラスに比べ、これらの値が小さいことが その理由の1つです。また、木材は吸・放湿性の多孔質で、多量の水分を保有できる細胞の集合体であることが、 アルミニュウムやガラスとの決定的な相違点です。そのため、木材には水滴の垂れるような、表面結露が生じにくいのです。

図7:表面結露

湿度と居住性

住宅内の湿度変化は、気候、季節、立地、生活様式によって異なります。 また、住宅の構造、開口部の位置や大きさ、換気扇などの生活器具によっても影響を受けます。 これらの条件すべてを、内装材料だけで充足することはきわめて困難です。しかし、炊事のときなど 水蒸気を多量に発生するときは、換気扇を回し窓を開け風を通し、雨天のときは窓を閉め、室内の湿気を 適当に調節しています。したがって、重要なことは、住宅の基本的な調湿性能の程度です。無居住、 密閉状態において、住宅がどのくらいの湿度調節機能を備えているかです。このような観点からも、 木材、木質系材料は最適であることが確認できます。

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参照  「木がつくる住環境」 発行  (財)日本木材総合情報センター

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